「見える化しよう」「これは自動化できないか」「うちは属人化している」——最近、こうした「化」のつく言葉を口にする回数が増えていないでしょうか。この記事では、なぜ経営の現場に「化」が増えたのかを整理し、そのうえで中小企業が最初に手をつけるべき順番を考えます。
「化」は「まだそうなっていない」の裏返し
可視化という言葉を使うのは、いま見えていないからです。自動化と言うのは、いま手作業だからです。標準化と言うのは、人によってやり方がばらばらだから。つまり「化」のつく言葉はどれも、現状とありたい姿のあいだにあるギャップに付けられた名前です。
会議で「化」を口にする回数が増えたとしたら、それは会社の課題が急に増えたということではありません。むしろ逆で、これまで言葉にならないまま放置されてきたギャップが、次々と言語化され始めたサインだと私たちは考えています。名前が付いた課題は、初めて議題に載り、初めて手を打てるようになります。
なぜ今、一斉に言葉になったのか——AIの登場
では、なぜ今なのでしょうか。理由はシンプルで、解決の手段が現れたからだと考えられます。人は、解決できる見込みのない問題には、あまり名前をつけません。「仕方ない」「そういうもの」で終わらせます。FAXからの転記も、ベテランの勘に頼った判断も、引き継げない業務も、長いあいだ「そういうもの」でした。
ところがAIの登場で、これまで人の手と勘に頼るしかなかった作業の多くが、「解決できるかもしれないもの」に変わりました。手段が現れると、問題は初めて問題として認識されます。道路ができると「遠い」という言葉に意味が生まれるのと同じで、AIという手段の登場が、放置されていた課題に一斉に名前を与え始めた——「化」の増加は、その現象だと捉えると、いま現場で起きていることの意味がはっきりします。
もう一つの理由は、比較対象が生まれたことです。生成AIを一度でも業務で試すと、「これまで30分かかっていた文書づくりが数分で終わった」という体験が生まれます。その体験が物差しになり、ほかの業務の「遅さ」や「手間」が急に目につくようになる。課題に名前が付くのは、多くの場合その瞬間です。
「化」のなかで一番注意したいのは属人化
可視化・自動化・効率化は、これから目指す方向を指す前向きな「化」です。ところが一つだけ、性質の違う「化」があります。属人化です。これだけは、すでに起きてしまった状態を指しています。
その人が休むと業務が止まる。その人が辞めると、やり方ごと消える。たとえばFAXで届く注文書を長年の担当者が読み取り、独自の判断を挟みながらシステムへ入力している——こうした業務の一連の流れを、担当者以外の誰も再現できない。私たちがご相談を受ける卸売業などの現場でも、決して珍しい光景ではありません。
属人化が注意を要するのは、平時にはコストが見えないことです。業務は問題なく回っていますし、その担当者は間違いなく優秀です。問題が表面化するのは、退職や長期の休み、急な体調不良といった、会社が選べないタイミングでやってきます。そして表面化したときには、引き継ぐ相手も時間も残されていないことが少なくありません。
属人化がなぜ生まれるのかについては、別の記事「属人化はなぜ起きるのか」で詳しく扱っていますが、要点だけ言えば、属人化は誰かの怠慢ではなく、日々の合理的な選択の積み重ねで自然に進みます。だからこそ、意志を持って逆向きに解いていく必要があります。
順番を間違えない——可視化、細分化、自動化
急いでいる会社ほど、いきなり「自動化ツール」を探しに行きます。しかしこの順番は、多くの場合うまくいきません。何を自動化すべきかが分かっていない段階でツールを導入すると、業務のほうをツールに合わせて曲げることになり、現場が疲弊して、結局元のやり方に戻ってしまうからです。
| 順番 | やること | 飛ばすとどうなるか |
|---|---|---|
| ① 可視化 | 業務に名前をつけ、流れを書き出す | 何をどう直せばよいか、誰にも分からないまま進む |
| ② 細分化 | 書き出した業務を、判断が要る部分と要らない部分に分ける | AIやツールに「渡せる単位」にならない |
| ③ 自動化 | 判断の要らない部分から、機械とAIに渡す | 判断ごと自動化してしまい、品質の事故が起きる |
まず業務に名前をつける(可視化)。次に分解して、判断が要る部分と要らない部分に分ける(細分化)。そのうえで、判断の要らない部分から機械とAIに渡していく(自動化)。遠回りに見えますが、この順番を守ることが、結果として一番の近道になると私たちは考えています。
細分化のイメージを一つ挙げます。「FAXの注文をシステムに入力する」という一つの業務も、分解すると「FAXを読み取る」「商品名を正式な名称に直す」「数量や納期の異常に気づく」「入力する」という複数の工程でできています。このうち読み取りと入力は判断の要らない工程で、AIに渡しやすい部分です。一方「異常に気づく」は判断の工程で、当面は人が持つのか、判断の基準を言葉にしたうえでAIに教えるのか、検討が必要になります。業務をこの解像度で見られるようになること自体が、細分化の狙いです。
「化」の終着点は、自走化
最後に、もう一つ大切な「化」があります。自走化です。外部の専門家に任せきりで自動化を進めると、社内の属人化が解消される代わりに、「あの会社にしか分からない」という社外への属人化に置き換わるだけ、ということが起こり得ます。それでは、依存の相手が変わっただけです。
自走化とは、高度なIT人材を新たに雇うことではありません。現場の担当者が、新しい書類や例外的なケースに出会ったとき、自分でAIに相談しながら対処できる。改善したい点が見つかったとき、社内で手を入れられる。その状態を指しています。
私たちCoReliaは、業務効率化の終着点を「外部の支援がなくても自社で回り、自社で改善できる状態」に置いています。ご支援の最初から、クライアントの「卒業」を前提に設計しているのはそのためです。「化」の行き先は、ツールの導入でも、外注先への依存でもなく、自社の自走です。
「化」が増えたのは、課題が増えたからではなく、解決できる時代になったから。だからこそ順番を守って——可視化、細分化、自動化、そして自走化へ。